【参考リンク】

現代思想の諸論点

精神病理学の諸論点

現代批評理論の諸相

現代文学/アニメーション論のいくつかの断章

フランス現代思想概論

ラカン派精神分析の基本用語集

2014年04月28日

生活保護受給者は社会のカナリア

福岡市が5月1日から生活保護ホットラインを開設するらしいです。名前だけ聞くといのちの電話みたいに聞こえますがそうじゃなくて、不正受給の情報収集窓口としての運用が予定されている。似たような取り組みは、さいたま市がやってるみたい。

別にこういう取り組みを悪いことだという気は無いけれど、世の中わりと紙一重なわけですよ。秒速で億を稼いだ人がこれまたあっという間に奈落の底に転げ落ちていく様はいかにも新自由主義的で、諸行無常のノスタルジーを感じさせましたが、程度の差はあれ、誰がいつどうなってもおかしくない。過去最悪の不正受給数とかも言われてますけど、あれはただ厳格にカウントしただけですからね。子どものアルバイトも含めるのは、さすがにどうかと思うわけです。生活保護受給者数は社会のカナリアです。不正受給対策も結構ですが、それ以上にもっとやるべきことはある気がしますけどね。

posted by かがみ at 23:16 | 法律関係

2014年02月21日

内閣法制局の憲法解釈権

このところ三味線弾くような記事ばっかりだったので久しぶりに硬い話題でも扱いますか。

【日本の解き方】首相発言は「立憲主義否定」か 内閣法制局に「憲法解釈権」なし - ZAKZAK

最近、安倍総理の集団的自衛権の憲法解釈変更発言に関連してこれは内閣法制局を軽んじるものだという議論があるようですが、内閣法制局は別に内閣から超然した独立機関でもなんでもなく、行政権内部の意見諮問機関にすぎず、内閣がその憲法解釈に縛られる法的理由は存在しません。ただ、そうはいっても内閣が変わるたび憲法解釈も右に左にころころ変わるようではこれはこれで問題です。なので法的安定性の観点から歴代の内閣法制局の意見は事実上尊重されてきたわけです。

従って仮にそれを覆すだけの堅牢な思想と論理に裏付けられた憲法解釈論を打ち出す用意と覚悟さえ首相にあれば、別段それを妨げる法理的な障害は行政権内にはない。その当否は憲法訴訟で問うのが三権分立上の筋と言えます。

ただ実際問題、憲法訴訟をやるとなると訴訟技術上の難しい問題が結構あるんですよね。現行の付随的審査制の下でただ漠然抽象的にかような憲法解釈はけしからんという訴えを起こしても、あえなく門前払い却下となるでしょう。中身が正論であろうが無かろうが、それ以前に事件争訟性に欠ける為です。だったら抽象的審査制がいいのかというと直ちにそういうわけでもないんですが、何れにせよ、内閣法制局があたかも憲法解釈の頂点に君臨するかのごとき世間的誤解が跋扈する背景は、こういった司法権に内在する事件争訟性の問題と無関係ではないでしょう。

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posted by かがみ at 03:24 | 法律関係

2014年01月20日

育児休業給付金の対象が特別養子縁組にも拡大

特別養子縁組で育児休業給付金 NHKニュース

このあたりを労働法の観点からメモ。

まず労働基準法上、産前6週間と産後8週間は休業請求が出来る。もちろんこの期間では赤ちゃんの首も座ってないでしょう。なので、さらに育児・介護休業法によって、一定の要件を満たせば、子どもが1歳あるいは1歳6か月まで休業を取得することができます。いわゆる育休です。対象となる子どもは実子養子を問いません。そして会社は休業取得を理由に社員をクビにすることは出来ない。ただ、育児休業期間中、事業者には賃金の支払い義務は無いです。そりゃそうですね。慈善事業をやっているわけではないですから。

そこで雇用保険法は雇用の円滑な継続を援助促進する観点から、被保険者に育児休業給付金として休業前の賃金の50%を支給することを定めている※。ただこの給付は実子の育休に限られ養子は除外されていたのが従前の運用だったんですが、今回、それが特別養子縁組の試験養育期間にも特例的に認められるようになったわけです。労働保険審査会の判断ですから雇用保険法の改正ではなく行政レベルの措置ということ。

どうなんですかね。賃金の50%で、最長1歳6ヶ月までの支給なので金額としては些少でしょう。給付金目当てで、厳格な様式の特別養子縁組をするということは考えにくいので、制度の濫用のリスクはあまり考えられないでしょう。

※休業開始前の2年間に被保険者期間が通算して12ヶ月以上あるものに限る

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posted by かがみ at 02:27 | 法律関係

2014年01月04日

「真面目に生きること」と法律婚主義

発達障害者の遺伝子が生き残ってきた問題 | ブログ運営のためのブログ運営

現行民法典は法律婚主義をとっており、各種の社会制度もそれを前提に成り立っているが、法律婚主義の根幹を支えるのは 、民法上の嫡出子は配偶者との間に産まれた子女である「はずだ」というあまりにも脆い想定です。言い換えればそういうある種の共同幻想の上に構築された法律婚主義が今日まで何とか維持できたのは、いわゆる「あの人は酒も女も賭博もやらず真面目だけが取り柄の・・」などという「真面目な生き方」が社会的美徳とされたことによるという仮説もまた成り立ちうる。

「真面目」という人的属性が美徳か欠陥かというのは時代性に規定される。昔の重化学工業主体の時代とは違い、高度コミュニケーション社会である現代は真面目なだけでは報われない時代といえる。真面目と柔軟性がないというのは表裏の関係に立つ。真面目であるが故に視野狭窄と罵倒され、真面目であるが故に貧乏くじをいつも引き、真面目であるが故に好きな人に気の利いた愛の言葉の一つだって囁けない。

そういう意味合いから言えば、わりと制度論的な側面から言及される少子化問題なども、その根底に沈澱する諸般の要素を濾過してみれば、こういうどちらかといえばロジカルでは処理できない理不尽な真実が出てきたりもするんでしょうか。

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posted by かがみ at 04:33 | 法律関係

2013年12月19日

生活保護給付基準額の変動は低所得層全体の問題

生活保護、2.9%幅引き上げへ 消費増税に対応:朝日新聞デジタル

反対運動もむなしく改正された生活保護法ですが、給付額の決定というのはあくまで行政裁量なので今回の法改正とは別の問題ということになります。別に改正したばかりの法律をまた改正するとかじゃないですよ?具体的には衣食等日常生活の需要を満たす為の生活扶助の部分の基準額が上がることになります。過去の消費税引き上げ時にもとられた措置です。

これは当然でしょう。こういうことをいうとどっかから反感を買われそうですが、今回の措置については低所得者全体に関わる問題。生活保護における給付基準額というのは、いわゆる「低所得」を定義するための一種のメルクマールであって、その変動は住民税の減免や就学援助など生活保護以外の様々な他の制度に波及していきます。その数は30制度以上です。

要するに生活保護の給付水準が下がることは、受給者のみならず生活保護を受けてないワーキグプア等の生活低所得者層の負担が増えるという構造になっている。

増税分を給与に上乗せる一般企業がどれだけあるかわかりませんが、筋違いの嫉妬に駆られてナマポ叩きに走るのは自分の首を絞めてるだけなので止した方が良いということです。

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タグ:法律 福祉
posted by かがみ at 03:10 | 法律関係