【参考リンク】

現代思想の諸論点

現代批評理論の諸相

現代文学/アニメーション論のいくつかの断章

フランス現代思想概論

ラカン派精神分析の基本用語集

2015年10月17日

マイナンバーで個人情報を串刺しに検索できるという誤解

あろうことか、内閣府大臣補佐官がマイナンバーTシャツを作ろうなどと揚言し、局所的に物議を醸し出していますが、番号法抵触云々もさることながら、より本質的な問題というのは「マイナンバーを他人に知られてどの程度の実害があるのか」ということになります。

よくある誤解でマイナンバーさえ分かれば個人情報を串刺しで検索できるというアレ、一体どういう場合を想定して言っているんでしょうか?ちょっとよくわからないんですよね。

少なくとも、まず一般人には絶対ムリでしょう?マイナポータルへのログインはマイナンバー使ってやるわけではないですからね。ICチップとパスワードが必要なので、マイナンバーだけ知ってても普通何もできない。

あと懸念されるとすればサイバーアタックによる情報流失の危険性ですが、これもどこまで現実的な危険があるのか疑問。個人情報は今まで通り所管の各省庁が管理するんですよ。行政機関が保有する個人情報を一元管理するサーバーが新設されるわけではないですからね。で、省庁間の情報連携にはマイナンバーではない符号のリンクコードを使い、匿名情報として相互にリファレンスされる。なので、例えばある省庁のサーバーが陥落したからと言ってそこから芋づる式にすべての個人情報が漏洩していくという事態というのはあり得ないわけです。

いや実はそんなのは表向きのアナウンスで、本当のところ国民の個人情報は既に完全に一元化されていて公務員の人はカンタンに机のパソコンで市民の個人情報を調べることができるに決まっている!とか、疑心暗鬼になる向きもあるかもわかりませんが・・・けど、そんなちょっとした流出事故でバレる嘘はつかないと思うんですよ。

あと、なりすましの危険とかも、運転免許や保険証でも同様にリスクはあるわけだし、個人番号カード固有のリスクではないでしょう。

政府や自治体はみだりにマイナンバーを他人に教えないようにとやたら喧伝しててますが、具体的にどういうリスクがあるかを示さず、ただ何かあったらいけないから駄目だと言うだけでは、いたずらに社会不安を煽るだけと思うんですよ。

マイナンバーって、Webサービスで例えるとマルチログインシステムってことでしょう?そういう時代の潮流なんでしょうから、とりあえず食わず嫌いせずに実際に使ってみてリスクとメリットを見極めてみようと思っています。

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posted by かがみ at 00:20 | 法律関係

2015年10月05日

マイナンバー検定というものがあるらしい

マイナンバー法施行 通知カード配達に課題 NHKニュース

個人的にはマイナンバーという名称が嫌いなので個人識別番号法って呼んでますけど、とにかくもいよいよマイナンバー法施行です。通知カードは簡易書留で届きます。今月中旬から来月頭にかけては注意です。

銀行預金口座との紐付はいまのところ任意なので、巷でよくある行政による資産把握とか、そういう危険はいまのところないです。将来的にはどうなるかわかりませんが、多分強制適用という流れなんでしょうね。

メリットとしては各種給付申請の際に所得証明書が不要になるといったところでしょうか。再来年からマイナポータルとかいう情報提供等記録開示システムが稼動します。マイナポータルにログインするにはICチップの認識が必要なので、カードリーダーが売れるでしょうね。

マイナポータルを通じて行政機関から一人一人に合った「お知らせ」が通知されるらしいですけど、各種給付の案内なども想定されているのでしょうかね??給付行政は申請主義であるがゆえに、知らなければ貰えない世界だけれど、そういう格差がなくなるのであればこの制度にも多少は意義があると言えるでしょうか。

マイナンバー検定試験 -マイナンバー法・マイナンバー制度を理解する-

早速検定試験が始まっているみたいですが、こういうのでお勉強するのも一つの手かも。敵を知り己を知れば百戦危うからずと言いますからね。

とにかくもう今更、この制度が是が非かという二者択一的な法哲学的議論をやる段階ではなくなったわけです。活用範囲拡大の動きは注視すべき所ではありますが、ただ嫌だ嫌だというだけでなく、とりあえず、想定されるリスクを把握した上で、できる範囲でリスクマネジメントして、このシステムをどう日々の暮らしの中で活用していくかの処方を見いだしていくというのが生産的な思考というものなのでしょう。

ただ、どこかで言っていたクレジット機能付き個人番号カード。あれだけはやめた方がいいと思いますけどね。

参考:マイナンバー社会保障・税番号制度

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タグ:法律 くらし
posted by かがみ at 23:57 | 法律関係

2015年09月10日

個人識別番号法を「マイナンバー」などと呼称する胡散臭さ

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今をときめくマイナンバーカード活用による消費税増税分2%還付制度ですが、与党サイドは4000円を上限とした実質的な軽減税率という認識みたいですね。えっとね?普通に生活必要品は8%据え置きじゃダメ?って当然思うわけなんですけど、そこはもう色々利権とかあって当然駄目なんでしょうね。マイナンバー普及啓発の切り札にしたいという思惑もあるでしょうし、残念ながら今更そもそも論を言って騒ぎ立てたところで時局既に遅きに失しているというわけです。

だいたい我々は別に革命家でもなんでもないし、所詮は市井を生きる凡人に過ぎないので、今となってはどうやってこのわけのわからない制度を日々のくらしの中で可及的に活用していくか、というライフハック的な発想に立たざるを得ないわけです。そうはいってもまだシステムの概要は細かくは把握してないんですけど、購入情報を追跡できるのであれば「マイナンバー活用で楽々家計簿\(^o^)/」とかね、そういう活用法も出てくるかもしれないかも知れませんね。いや、知らないですけどね?制度の概略を知りたい方はWikipediaでも検索してみてください。

カードリーダー導入の為にPOSシステムの改善は必須でしょうか?導入できない店は客足が遠のくだろうし昔ながらの店はどうすんだか。

いずれにせよ普及してしまえば、ライフスタイルに相当の影響があるのは間違いないでしょう。マイナンバーカードを探す人が続出してレジが混みそう。マイナンバーカード忘れたから、次持ってきた時一緒にポイントつけてよねとか言う人、普通にいるだろうし、コンビニ向け対応マニュアルとか万全にしておかないと現場がひどいことになりそうです。

そんな感じですが、だいたいね、前からずっと思っていたんですけどそもそも「マイナンバー」とかいう名前がもう既に胡散臭いわけですよ。マイナンバーマイナンバーって普通に言ってるけどあれ、正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」ですから。「個人識別番号法」とかいう方が適当でしょう。

ごめんなさい、長々と書いて言いたいことは実はそれだけでして。そういうわけで久しぶりの更新なのに論理明晰で鋭い見識とか、そういったものが一切無い非常にありふれた凡百な感想だけで終わってしまい、大変申し訳なく思っています。
posted by かがみ at 02:13 | 法律関係

2015年06月26日

安保法案雑感

この辺は遺憾ながら不勉強でして雑感だけ。

歴代の法制局長官が「憲法9条に違反する」と指摘(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

“当初はお盆前の法案成立を目指していましたが、与党幹部は「憲法学者の違憲表明ですべてがおかしくなった」と嘆いています。”


今頃やっぱり憲法学者なんか呼ぶんじゃなかったって絶対思ってるんだろうなあ。

ホルムズ海峡の機雷掃海が具体的ケースとして挙げられていますけど、どうなんでしょう。機雷掃海時に戦闘状態に突入した場合などが想定されてるんですかね?日量1700万バレルの原油が毎日通過するあの海域が日本に重要なシーレーンなのは疑いないんだけど、これが集団的自衛権の発動要件である「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」と言えるかは評価は分かれるでしょう。ホルムズ海峡を引っ張ってくるのは参照例としてはあまり適切ではないと言われています。

イランによる「ホルムズ完全封鎖」は非現実的 | 安全保障 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

あと、これだけ毎日の如く至る所で百家争鳴なのに、肝心の安保法案の中身自体を仔細に検証している記事というのは見かけないんですよね。安保法案というのは国際平和支援法の新設、そして、自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態安全確保法、国際平和協力法などの従来法10法の改正案の総称です。これだけの数の改正なので、是とすべきところもあれば非とすべきところもどちらも出てくるはずなんですがそういう話にはなっていない。集団的自衛権、存立危機事態、重要影響事態という概念だけが先行してて、白か黒か、全部一緒くたに違憲か合憲かという、華々しいかも知れないけれど、あまり生産的ではない空中戦を延々とやっている印象が強いという感じです。

比較不能な価値の迷路―リベラル・デモクラシーの憲法理論
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posted by かがみ at 01:45 | 法律関係

2015年06月01日

年金給付額の切り下げは生存権の侵害になるか

痛いニュース(ノ∀`) : 「年寄りは死ねというのか」年金減額は憲法違反…全国の「年金受給者」が提訴 - ライブドアブログ

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心情としてはお気の毒としか言いようがありませんが、これは立法政策の問題なので。

要は年金給付額の切り下げは生存権の侵害になるかどうかが争点となっているわけですね。生存権については周知のように法的性格に争いがあり、プログラム規定説、抽象的権利説、具体的権利説が対立してきた歴史的経緯がありますが、一口に社会保障といっても、その範囲は広範であり、そのどこまでをどのように憲法的保護の対象とするかが本質的な問題なわけでして、今日では抽象的権利説の立場に立ちつつも一定の場合に具体的権利性が顕現する二元的権利説が有力となる。いわゆる制度後退禁止原則もかかる立場から主張される。

ただそうはいってもその禁止の程度に濃淡は付くでしょう。民主主義システムの正常な可動の前提となる権利侵害は厳格に審査するという二重の基準論的な思考法で言えば、生活保護法のように「健康で文化的な最低限度」のまさに分水嶺を画す防貧政策の切り下げは、貧すれば鈍するの言葉通り民主制の正常な可動を阻害するため厳格な合理性が要求されるが、他方で年金のような「健康で文化的な最低限度」以下に堕ちることを予め防ぐ救貧政策の場合はある程度の合理的な理由があれば切り下げもやむを得ないかもしれない。

確かに、年金の給付水準が切り下がると年金の他に見るべ資産がない人にとって困るでしょう。けれども、その場合は普通に働くか生活保護を受けてくださいという他はない。生活保護と違い年金制度というのは、建前としてはそれ単独で「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しているわけではない。年金の受給額というのは福祉の分配の問題でありそれは原理的には憲法問題というより基本的には民主制の過程において決すべき問題なわけです。本件提訴は問題の社会的周知という性格も多分にあるでしょうが、残念ながらあまり共感は得られていないように思われます。

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posted by かがみ at 02:30 | 法律関係