【参考リンク】

現代思想の諸論点

現代批評理論の諸相

現代文学/アニメーション論のいくつかの断章

フランス現代思想概論

ラカン派精神分析の基本用語集

2013年11月10日

扶養義務の履行は受給要件?生活保護法と行政の論理。

長野市:生活保護申請「援助前提」…親族に書面配る− 毎日jp(毎日新聞)

はてブで流れてきたニュース。まだこういう事をやっているのかと呆れるばかりですが、典型的な水際作戦なパターンですね。親戚筋にこういう通知をバラまきますよって窓口で言われたら、世間体を慮って申請を諦める人も多いでしょう。職員の方も組織の論理でやっているから生活保護法違反の有無に自覚的な人間というのは思ったほどいないんでしょうね。

生活保護は法定受託事務であり、本来的には全国一律の対応が求められるべきなんですが、現実にはこういう類いのわけのわからない有象無象のローカルルールが、全国津々浦々で色々ある。しかしながら法律による行政が基本原理ですから、生活保護法は全てのローカルルールに優先します。なるほど生活保護法4条には「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」とあります。けれども、ここでいう「扶養義務」とは「社会通念上それらの者にふさわしいと認められる程度の生活を損なわない限度」であり、要は「もしも余裕があったら扶養してあげてね(´・ω・`)」というその程度のレベル。そして「優先して行われる」というのは、いわゆる収入認定であって、その限度で受給額が縮減されるという意味にすぎません。本件文書のように、それ以上の義務の履行が受給要件となるかの如く誤認させる役所の言動は、生活保護法上の申請権を侵害する疑いがあると言わざるを得ないでしょう※。

※平成15年3月4日厚生労働省社会・援護局関係主管課長会議「法律上認められた保護の申請権を侵害しないことは言うまでもなく、侵害していると疑われるような行為自体も厳に慎まれたい。」

役所は常に市民の味方とは限りませんから。もし似たような事例で困っている方がいたら、泣き寝入りなんかせず、すぐにしかるべき支援団体に相談する事を勧めます。

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巷では一部の受給者の言動がクローズアップされて反感を買ったりもしていますけど、こういう時代、生活保護受給を怠惰なんて責める資格は誰にも無いと思うんですよ。資本主義社会である以上、結局誰かがババを引くしか無いんです。そしてグローバル経済下における要素価格均等化の濁流が齎す帰結は、あらゆる分野における「お前の代わりなど掃いて捨てるほどいる」状態の現出です。ロールズが言うところの道徳的恣意の理論を持ち出すまでもなく、格差の帰結を独り個人の自己責任と片付けるほど単純な時代ではないでしょう。ババなんか誰も抜きたくないですよ。けど誰もが明日は我が身です。大きな顔して受給者を叩いているあなたがそっち側にいられるのは本当に「たまたま」なんですからね。

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posted by かがみ at 01:46 | 法律関係