今日ようやく宮崎駿監督の「風立ちぬ」を観てきました。雑感のみ。
風立ちぬ メッセージ
ポニョ以来5年ぶり。堀辰雄氏の「風立ちぬ」原作は主人公とヒロインがサナトリウムに引っ込んじゃって静的な私小説的世界が延々と繰り広げられるんだけど、映画の方は、全く別物になっている。ヒロインの名前やモチーフなど堀氏の別作「菜穂子」からの影響も持ち込みつつ、宮崎流プロジェクトX的「ものづくり」の物語が動的に展開される。ジブリ映画だからって子ども連れて行こうと思っている人は注意した方がいいですよ。キスシーンもやたら多いし男女のナニを暗示するシーンもあるし、あんまり家族で見る映画じゃないかな。
緻密なメカニック描写と美しい日本的田園風景の両極性を高い次元で統合した作画は素晴らしい。久石譲氏の音楽も物語に儚い余韻を添えてきます。中盤に絡んでくる謎のドイツ人カストルプさんはひょっとしてリヒャルト・ゾルゲってことなのかな?そう読んだ方が物語に深みが出て面白いですね。あのピアノシーンが一番の個人的名場面でしたけど。
映画『風立ちぬ』のヒロインが「菜穂子」である理由 | 冷泉彰彦 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
『風立ちぬ』 (内田樹の研究室)
映画『風立ちぬ』感想 - 琥珀色の戯言
『風立ちぬ』を見て驚いたこと - sombrero-records.note
「風立ちぬ」感想:仕事に生きるということ - 脱社畜ブログ
監督は意図していないんだろうけれど、ゼロ年代のフィルターを通してみると、病弱ヒロインの無条件的承認というのはかなりエロゲ的です。ひょっとして菜穂子さんは今までのジブリ映画史上で一番、深夜アニメ視聴層の琴線に触れてきたんじゃないかな?
けれど普通のエロゲ(?)だと、選択肢は「1 戦闘機の設計なんかうっちゃって君とサナトリウムに引っ込んで暮らすよ」「2 残念だけど、仕事はほっぽり出せないから離ればなれになるしかない・・・・」の2択しか有り得ないと思うんですよね。ここで「3 俺は戦闘機の設計を続けるけど、君とも離れたくない。だから命を削ってそばにいろ」という、えらく身勝手な選択肢を提示して、それを何の葛藤も見せずに主人公に選ばせてしまうのが宮崎さんの凄いところです。今回のテーマは「矛盾」らしいですが、多分、万人から祝福されるような綺麗な結末にしようとはハナから思っていないんでしょうね。一種の決断主義です。今作で主人公堀越二郎の声を務めた庵野さんが、昔、対談で「宮さんの最近の作品は「全裸の振りして、お前、パンツ履いてるじゃないか!」という感じが、もうキライでキライで。「その最後の一枚をお前は脱げよ!」というのがある」などと言ってましたが、そういった意味で今回の宮崎さんはかなり本気で裸踊りをしようとしたんじゃないかな。