【参考リンク】

現代思想の諸論点

精神病理学の諸論点

現代批評理論の諸相

現代文学/アニメーション論のいくつかの断章

フランス現代思想概論

ラカン派精神分析の基本用語集

2013年06月07日

貞本版エヴァ完結。「逃げたっていいんだ」という貞本さんの世界観。

TVシリーズと同時にメディアミックス展開を開始して18年。遂に完結しましたね。

「貞本エヴァ」ついに完結! ヤングエース7月号発売(みんなのエヴァンゲリオン(ヱヴァ)ファン)

最後は変えてくるんだろうな、って気はしていましたが、ある意味で貞本氏らしい終わり方ですね。これも一つのエヴァの正統な終わり方だと思うんですよ。

例えば新約聖書にだって4つの福音書が並んでいるでしょう。福音書というのはイエスの言行に対する証言録のようなものでして、成立順としてはマルコが一番古く、その後に、後の文献が先の文献を参照するような形で、マタイ・ルカと続き、最後に有名な「ヨハネの福音書」が位置している。先行する3つは割と内容が近いので、3つ併せて「共観福音書」とか呼ばれています。ヨハネだけが別個独立した感があって、キリスト教の思想的な立場が比較的明確に打ち出されている。例えば共観福音書の方はイエスは「人の子」だと言っているのに対して、ヨハネの福音書はイエスを「神の子」だとはっきり明言している。いわば同一の出来事に対する4つの異なる証言があって、そのいずれも正典として新約聖書に取り込んでいるというわけです。

なので、結局漫画版というのは何だったのかというと、新約聖書になぞらえるとTV版・旧劇とともに共観福音書に相当する部分を構成する。個人的にはそういう感じで捉えてますね。

あと面白いことに、マタイとルカの参照元は先行するマルコの他とある文献があって、それは「Q資料」などと呼ばれているそうです。新劇Qのアスカの台詞と漫画版のシンジの行動がある点でリンクしていることなど思えば、これはこれで非常に興味深いところではあります。

ところで貞本版エヴァにはあの有名な「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ」っていう台詞がないんですよね。あれは意図してやっているらしくてそこが庵野版との最大の相違を端的に表している。昔、「パラノ・エヴァンゲリオン」か何かの対談で読んだんですけど、貞本さんは逃げたっていいんだっていう前提がある。それでも人は生きていけるんだっていう。それがシンジの性格にも表れていたしああいう飄々としたエンドに繋がっているのかな、と。

ヤングエース 2013年 07月号 [雑誌]

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posted by かがみ at 20:50 | 文化論