小野市の生活保護受給者のパチンコ云々の件。生活保護の金をパチンコにつぎ込むことの是非はあるでしょうが、他方、生活保護の決定・実施というのは本来は国がやるべき法定受託事務なので、少なくとも、いち自治体が独自条例を作ってそういうところに手を突っ込むのは、条例制定権の限界論的な観点からいって果たしてどうなの?という部分ではあります。
最近、何かと風当たりの強い生活保護制度ですが、あれは別に慈善事業でやっているわけではないですからね。治安維持対策の側面があることは否定はできないし、消費性向の高い層に重点的にカネをばらまくのは乗数理論の基本でしょう。昔の憲法の学説なんかでは、資本主義経済である以上は憲法25条の社会権は法的には無意味なプログラム規定とかいう向きも有力ではありましたが、あれも所詮は高度経済成長と東西冷戦という時代背景の産物に過ぎず、むしろJ.Sロールズが論じたように、個人の価値そのものと社会的評価を切断する道徳的恣意性の議論を前提とすれば、所得の可及的な再分配は社会契約レベルの要請であり、健康で文化的な最低限度のラインを確保する生活保護法を底辺とした社会福祉法体系の存在は、持続的な資本主義体制を原理的に正当化する役割をもっているはずです。
それは確かにけしからん受給者はいるでしょうね。ただ、そういう輩を血眼になって捜すのが福祉制度の役割ではないはずです。たとえ99人のクズを見逃してしまったとしても、本当に必要な人が1人救われればそれでいいじゃないか、と思うのは違うんでしょうかね。
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