今回の騒動で初めて知りましたが、奈良県は児童ポルノの単純所持に対して条例で罰則を課しているんですね。件のグラビアの妥当性はさておき、条例制定権の限界という観点から見るとなかなか興味深い事案です。地方自治法14条1項によれば地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、自治体事務に関する条例を制定することができる。では「法令に違反しない限り」とはどういう場合か。徳島県公安条例事件判決によれば「条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによつてこれを決しなければならない」という。
そして具体的類型として「ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうる」と言っています。
これを児童ポルノ規制法につき考えるに、単純所持に関しては対象範囲が不明確で捜査権の乱用の危険性を懸念する意見が出たりして規制が見送られた経緯があり、要するに国レベルでは慎重な立法判断を行っているわけです。そうであれば当該規制は上記判例が言うところである「規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨」に少なくとも現時点では当てはまる可能性は高いかと思われます。
もとより児童虐待など万死に値するのは当然ですし本件グラビアが児童ポルノ規制法そのものに反するかは色々議論があるところでしょう。ただ、いち購入者を直接処罰する単純所持に対する対応が住んでる都道府県によって異なるっていうのはどうなのよ?という部分はあるでしょうね。
参考:奈良県:子どもを犯罪の被害から守る条例
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蒼山 サグ
アスキー・メディアワークス
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