これはかつては抑うつ神経症という名前で文字通り神経症圏の問題として捉えられていましたが、近年の研究において、脳内物質セロトニンの不足に起因するうつ病類似の構造が指摘されていまして、DSMにおいても1980年の第3版改訂において大うつ病障害と同じ気分障害の項に分類されています。
症状がうつ病ほどドラスティックでないところが逆にうつ病以上に厄介でして、多分に本人の性格の問題と誤解されてしまい、周囲から自信を持ってとか、前向きにとか、そういった「アドバイス」をよくされてしまうわけです。
ですけど、例えば深刻な頭痛で悩んでいる人に「頭痛など気にしないように」などというアドバイスがどれほど馬鹿げているかは誰でもわかると思いますが、要するにそういうことを普通にやってるわけです。当人にとってはネガティヴ思考というのはある種の症候群のようなものであり、いくらポジティブ思考とか言われたところで、そうしたくても出来ないわけでして、むしろ人並みにポジティブ思考が出来ない自分はやはり人間として駄目なんだとますますネガティヴ思考を深めるだけの悪循環を促進させるだけに終わってしまう。
気分変調性障害によるネガティヴ思考はあくまで病気の症状であり、パキシルとかジェイゾロフトなどでおなじみのSSRI系の抗うつ薬が大うつ病ほどではないにせよ、効果があるというエビデンスもあるらしいんですが、本人も病気ではなく性格の問題と認識しているので、来院に至るのが難しい。やれキャリアデザインだとかスキルアップだとか何かと色々急き立てられる時代性とも相性が悪いでしょうね。心理療法の観点からは、ネガティヴ思考の現状を否定せず理解するという意味で、無条件受容、共感的理解というものはもちろん重要なのはいうまでもないので、もしや、という人が身近にいたら、そういう認識も念頭に入れて優しく接してあげましょうね。
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