2015年06月01日

年金給付額の切り下げは生存権の侵害になるか

痛いニュース(ノ∀`) : 「年寄りは死ねというのか」年金減額は憲法違反…全国の「年金受給者」が提訴 - ライブドアブログ

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心情としてはお気の毒としか言いようがありませんが、これは立法政策の問題なので。

要は年金給付額の切り下げは生存権の侵害になるかどうかが争点となっているわけですね。生存権については周知のように法的性格に争いがあり、プログラム規定説、抽象的権利説、具体的権利説が対立してきた歴史的経緯がありますが、一口に社会保障といっても、その範囲は広範であり、そのどこまでをどのように憲法的保護の対象とするかが本質的な問題なわけでして、今日では抽象的権利説の立場に立ちつつも一定の場合に具体的権利性が顕現する二元的権利説が有力となる。いわゆる制度後退禁止原則もかかる立場から主張される。

ただそうはいってもその禁止の程度に濃淡は付くでしょう。民主主義システムの正常な可動の前提となる権利侵害は厳格に審査するという二重の基準論的な思考法で言えば、生活保護法のように「健康で文化的な最低限度」のまさに分水嶺を画す防貧政策の切り下げは、貧すれば鈍するの言葉通り民主制の正常な可動を阻害するため厳格な合理性が要求されるが、他方で年金のような「健康で文化的な最低限度」以下に堕ちることを予め防ぐ救貧政策の場合はある程度の合理的な理由があれば切り下げもやむを得ないかもしれない。

確かに、年金の給付水準が切り下がると年金の他に見るべ資産がない人にとって困るでしょう。けれども、その場合は普通に働くか生活保護を受けてくださいという他はない。生活保護と違い年金制度というのは、建前としてはそれ単独で「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しているわけではない。年金の受給額というのは福祉の分配の問題でありそれは原理的には憲法問題というより基本的には民主制の過程において決すべき問題なわけです。本件提訴は問題の社会的周知という性格も多分にあるでしょうが、残念ながらあまり共感は得られていないように思われます。

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posted by かがみ at 02:30 | 法律関係