健康保険法において被扶養者の収入要件(60歳未満)はその人の年間収入見込みが130万円未満で、かつ、その家族の収入が月額108,334円未満であることです。
税扶養は過去1年の収入が基準になるが、社会保険扶養は将来の収入見込みが基準となるんです。これがなかなか曲者で、例えば極論すれば1月に奥さんが退職して200万円の退職金が入った場合、その時点で年収130万円をオーバーしているが、2月が収入0円であれば、2月を基準にした向う1年の見込み収入は0円なので2月の時点で扶養認定は可能ということなんでしょう。
1番厄介なのは奥さんのパート収入が108334円を超えた場合。大抵の組合健保では概ね3ヶ月続けて108334円を超えなければ、扶養に留まるという扱いにはなっていますが、奥さんのパート先が繁忙期で、たまたま3ヶ月続けて108334円をオーバーするというケースは割とある話でしょう。
これをご主人が正直に申告すれば、3ヶ月の初日に遡り健保の扶養が取り消され、その間の療養給付は全て返還となる。一方で、国保には3か月遡って保険料納付が義務付けられる。それで健保に返還した医療給付が療養費として国保から補填されるかというと、これは填補される「かもしれない」。行政裁量なんです。つまり填補されない可能性も理論上あるわけです。
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これはいかにも理不尽でしょう。だから実際は黙ってやり過ごそう、とか、今回は見なかったことにしよう、など、そういう極めてグレーな対応に何となく着地してしまうケースが実際多いのではないかと思われますし、何より奥さんがそういう可能性を恐れてあまり働きたがらない、というのは社会的な損失でもあります。
健康保険法は一体なんで被扶養者の要件論として将来に向かっての見込み収入額とか、そういう面倒くさい、というか不確定要素の強いものを取り込んでいるんでしょうか?税扶養と同様、年額ベースでやった方が、法体系としてもシンプルだし、わかりやすい気がしますけどね。