2015年08月30日

気分変調障害、ネガティブ思考という病

あらゆる物事を不思議なくらい悲観的に捉えるネガティブ思考で「この人はなんでそういう風に捉えるんだろう・・・」と首を傾げたくなるような人って周囲にいないですか?こういった慢性的なネガティヴ思考というはどうやら個人的性格の問題ではなく、気分変調性障害の症状である可能性が高いそうです。

これはかつては抑うつ神経症という名前で文字通り神経症圏の問題として捉えられていましたが、近年の研究において、脳内物質セロトニンの不足に起因するうつ病類似の構造が指摘されていまして、DSMにおいても1980年の第3版改訂において大うつ病障害と同じ気分障害の項に分類されています。

症状がうつ病ほどドラスティックでないところが逆にうつ病以上に厄介でして、多分に本人の性格の問題と誤解されてしまい、周囲から自信を持ってとか、前向きにとか、そういった「アドバイス」をよくされてしまうわけです。

ですけど、例えば深刻な頭痛で悩んでいる人に「頭痛など気にしないように」などというアドバイスがどれほど馬鹿げているかは誰でもわかると思いますが、要するにそういうことを普通にやってるわけです。当人にとってはネガティヴ思考というのはある種の症候群のようなものであり、いくらポジティブ思考とか言われたところで、そうしたくても出来ないわけでして、むしろ人並みにポジティブ思考が出来ない自分はやはり人間として駄目なんだとますますネガティヴ思考を深めるだけの悪循環を促進させるだけに終わってしまう。

気分変調性障害によるネガティヴ思考はあくまで病気の症状であり、パキシルとかジェイゾロフトなどでおなじみのSSRI系の抗うつ薬が大うつ病ほどではないにせよ、効果があるというエビデンスもあるらしいんですが、本人も病気ではなく性格の問題と認識しているので、来院に至るのが難しい。やれキャリアデザインだとかスキルアップだとか何かと色々急き立てられる時代性とも相性が悪いでしょうね。心理療法の観点からは、ネガティヴ思考の現状を否定せず理解するという意味で、無条件受容、共感的理解というものはもちろん重要なのはいうまでもないので、もしや、という人が身近にいたら、そういう認識も念頭に入れて優しく接してあげましょうね。

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タグ:こころ
posted by かがみ at 20:45 | 心理療法

2015年08月14日

二重人格という問題。影とコンプレックスの円環構造。

いろいろ心身削られる事も多く、久しぶりの更新ですが、理論的整理のための覚書なのであまり面白くないと思います。

さて、二重人格というものがありますが、これはヒステリーの一種でして、DSM的にいうと解離性同一性障害(DID)の症状として分類される。かかる二重人格を心理療法の見地からどう読み解くかという問題ですが、まず河合隼雄「ユング心理学入門」では有名なイブホワイト/イブブラックの事例を引きつつこれを「影」の問題として取り上げられています。

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ところが同じ河合先生の名著「コンプレックス」という新書では、コンプレックスが自我統合を乱す例として二重人格が取り上げられており、ここでもまたイブホワイト/イブブラックの事例が登場する。

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これは一体どういう事なのか。二重人格とは影の問題なのか、コンプレックスの問題なのか、この辺りを読めば読むほどよくわからなくなってきます。ここを理論としてどう説明するかという問題です。

さしあたり定義的に整理すると、コンプレックスとは個人的体験が無意識下に抑圧され感情に色付けられた心的複合体といわれる。一方で影とは「元型」の一つであり、元型とは個人を超えた人類全体に共通する先天的な精神力動作用と言われる。後天的作用であるコンプレックスとは概念上明らかに全くの別物という事になります。

ただ、影は元型のうちでも自我(これも元型です)の真裏に位置するため属人的色彩が強く、実際の心的過程においてコンプレックスと機能的に大きく重なる部分を持っており、現実の臨床例では両者を截然と区別するのは困難なように思われます。影がコンプレックスの形成を助長したと言える例もあるでしょうし、コンプレックスが作動して影が顕現したとも説明できる例もあるでしょう。こうして、二重人格は影の顕現とも言えるし、コンプレックスの作動とも言える。つまり、影とコンプレックスは個人的無意識において渾然一体となり円環構造を形成していると把握するのが妥当なような気がします。

この辺りは他のコンプレックスと元型の関係全体にもある程度適用しうる関係性なんでしょうか。大きな誤読誤解を孕んでいる気もしますが、先の河合先生の本を再読する際この辺りを意識して読めばまた違った発見もあるかもしれないので、今後の理論的整理の為にも一度思考過程を拙いながらもまとめておきたいと思います。
タグ:こころ
posted by かがみ at 00:32 | 心理療法