2015年06月29日

人間関係と元型的布置

ユングは無意識の深層に更に普遍的無意識を措定し、そこに元型という考え方を導入した。元型と言うのは言ってみれば自我とは別の人格です。自我の対極である影という元型が最もわかりやすいでしょう。化物語でいうブラック羽川ですよ。

こういう内的な面のみならず現実の対人関係においても登場する人物が元型的な役割を担うこともあるのかも知れないですね。例えば、ある人(自我)にとって、誰かがグレートマザー的な役割を担い、別の誰かがトリックスターを演じることもあるかもしれない。

こういう関係性を見極めることこそ、まさに心理療法における元型的布置というべきなんだろうかという気がふと、しました。




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posted by かがみ at 02:07 | 心理療法

2015年06月26日

安保法案雑感

この辺は遺憾ながら不勉強でして雑感だけ。

歴代の法制局長官が「憲法9条に違反する」と指摘(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

“当初はお盆前の法案成立を目指していましたが、与党幹部は「憲法学者の違憲表明ですべてがおかしくなった」と嘆いています。”


今頃やっぱり憲法学者なんか呼ぶんじゃなかったって絶対思ってるんだろうなあ。

ホルムズ海峡の機雷掃海が具体的ケースとして挙げられていますけど、どうなんでしょう。機雷掃海時に戦闘状態に突入した場合などが想定されてるんですかね?日量1700万バレルの原油が毎日通過するあの海域が日本に重要なシーレーンなのは疑いないんだけど、これが集団的自衛権の発動要件である「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」と言えるかは評価は分かれるでしょう。ホルムズ海峡を引っ張ってくるのは参照例としてはあまり適切ではないと言われています。

イランによる「ホルムズ完全封鎖」は非現実的 | 安全保障 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

あと、これだけ毎日の如く至る所で百家争鳴なのに、肝心の安保法案の中身自体を仔細に検証している記事というのは見かけないんですよね。安保法案というのは国際平和支援法の新設、そして、自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態安全確保法、国際平和協力法などの従来法10法の改正案の総称です。これだけの数の改正なので、是とすべきところもあれば非とすべきところもどちらも出てくるはずなんですがそういう話にはなっていない。集団的自衛権、存立危機事態、重要影響事態という概念だけが先行してて、白か黒か、全部一緒くたに違憲か合憲かという、華々しいかも知れないけれど、あまり生産的ではない空中戦を延々とやっている印象が強いという感じです。

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posted by かがみ at 01:45 | 法律関係

2015年06月01日

年金給付額の切り下げは生存権の侵害になるか

痛いニュース(ノ∀`) : 「年寄りは死ねというのか」年金減額は憲法違反…全国の「年金受給者」が提訴 - ライブドアブログ

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心情としてはお気の毒としか言いようがありませんが、これは立法政策の問題なので。

要は年金給付額の切り下げは生存権の侵害になるかどうかが争点となっているわけですね。生存権については周知のように法的性格に争いがあり、プログラム規定説、抽象的権利説、具体的権利説が対立してきた歴史的経緯がありますが、一口に社会保障といっても、その範囲は広範であり、そのどこまでをどのように憲法的保護の対象とするかが本質的な問題なわけでして、今日では抽象的権利説の立場に立ちつつも一定の場合に具体的権利性が顕現する二元的権利説が有力となる。いわゆる制度後退禁止原則もかかる立場から主張される。

ただそうはいってもその禁止の程度に濃淡は付くでしょう。民主主義システムの正常な可動の前提となる権利侵害は厳格に審査するという二重の基準論的な思考法で言えば、生活保護法のように「健康で文化的な最低限度」のまさに分水嶺を画す防貧政策の切り下げは、貧すれば鈍するの言葉通り民主制の正常な可動を阻害するため厳格な合理性が要求されるが、他方で年金のような「健康で文化的な最低限度」以下に堕ちることを予め防ぐ救貧政策の場合はある程度の合理的な理由があれば切り下げもやむを得ないかもしれない。

確かに、年金の給付水準が切り下がると年金の他に見るべ資産がない人にとって困るでしょう。けれども、その場合は普通に働くか生活保護を受けてくださいという他はない。生活保護と違い年金制度というのは、建前としてはそれ単独で「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しているわけではない。年金の受給額というのは福祉の分配の問題でありそれは原理的には憲法問題というより基本的には民主制の過程において決すべき問題なわけです。本件提訴は問題の社会的周知という性格も多分にあるでしょうが、残念ながらあまり共感は得られていないように思われます。

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posted by かがみ at 02:30 | 法律関係